横須賀線に飛び乗る。東京始発だったらしく席がぽつぽつと空いていた。
優先席が広かったので座る。お年寄はいない時刻だ。
電車が走り出してすぐ、ベビーカーを押したポニーテールが通路を進んでくる。
車両の端っこが優先席なので、彼女は僕の横のドアにベビーカーを駐車させた。
「座る?」声をかける。
「あ、大丈夫です。荷物が多くてどうせ座れないので。」
荷物くらいなんとかしてあげるけど、ま、いっか。
彼女はしゃがんでお菓子を子供に与えたり飲み物を出したりと、よろけながら忙しい。
子供もむずがったりもする。
彼女はベビーカーから子供を降ろし、抱き上げる。疲れた顔だ。まだ若い。
僕は横にずれて席をあけてやる。座ったほうがいいよ。
すみません、と彼女は言うが大きなバッグ2つと子供を抱え、どうにもならない。
電車は隣の駅に到着する。
優先席で、子供を抱えた母親が空席の前に立っている。
その状況は明らかな事態を物語っているだろう。その席は彼女に権利がある。
にもかかわらず、50代のオヤジはホームから勢いよくその空席めがけて突進して座った。
あほか?おまえは!
しばらくすると彼女は限界だったのだろう、子供をベビーかに再び座らせていた。
むずかる声がする、見るとかがんだ彼女の大きな乳房と乳首が目に飛び込んできた。
ゆったりしたTシャツなのでかがむと見えちゃうんだ。
でもそれはラッキー!でもエロな光景でもなく、子育ての重労働さと困難さを思い知るだけだった。
同じ駅で降りる。よろけながらベビーカーを抱え、ホームへ。そこで端に寄り、人ごみをやり過ごしていた。
駅からの坂を下る。まだ30度はありそうな熱気。
満月が昇っていた。
後ろから子供の声がした。
やがて、ブーンと言いながらポニーテールがベビーカーとともに僕を追い越し坂を駆け下りて行った。
photo : Leica D-LUX3 DC vario-elmarit f2.8-4.9/9-23 asph
2008年7月19日土曜日
満月の夜に
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